日本経済新聞は様々な特集記事を組んでおりまして、教育機関に奉職している私としましては、教育関連の記事に関しては毎回勉強になる記事が多いです。

今月もシリーズ物の「教育岩盤」が掲載されており、気になる記事が。

「「みんな一緒」頭脳獲得阻む 大学、待遇・評価で脱平等 教育岩盤・突破口を開く(2)」(2023.08.07 日本経済新聞・会員限定記事)はこちら

会員限定ですが、登録すればご覧いただけますので、詳細は是非ともご覧いただきたいのですが、早稲田大学が優れた教員の獲得策として高額給与を支給する制度を導入したという一文があります。

調べてみますと、確かに早稲田大学カーボンニュートラル社会研究教育センターの概要ページに記載があります。

「概要 – 早稲田大学 カーボンニュートラル社会研究教育センター」(早稲田大学)はこちら

曰く、

「2023.2.3 教員の高額給与制度導入 世界から優れた研究者を「卓越教授」として招聘するための「教員の高額給与制度」(最高年俸7500万円)の導入」

とあります

支給の幅はあるようですが、ここまでの高給を支給してでも推し進めたい研究であれば、大学としては一歩を踏み出すべきという決断をしたということなんでしょう、さすが田中総長。ここ数年の早稲田大学の事業の推進力は田中総長のリーダーシップがあってこそなんだろうという印象です。

と言いながらも、地方の私立大学に勤めている身としてはそう言えば大学教員の給与って国内の大学ではそれほど差がない(だからこそ、早稲田大学の上記の制度はインパクトが強かったのです)という印象ですが、海外と比較した場合どうなのだろうと下世話な関心の方が強くなりました。

「なぜ日本の大学教授の給料はアメリカの大学より低いのか?」(2018.04.26 ニューズウィーク日本版)はこちら

上記の記事にもあるとおり、カーネギー教育振興財団による大学分類では大学が以下の通り分類されており、当然のことながら、この分類によっても給与が異なるという結果に至っているようです。

(1)高度な研究大学

(2)研究大学

(3)博士課程大学

(4)修士課程大学

(5)学士課程大学

(6)短期大学

(7)特別な目的をもった大学

上記の記事では文化的背景にも触れられていますので、是非ご覧いただきたいのですが、国内でも優秀な児童生徒は「末は博士か大臣か」と例えられていたのは遥か昔。今では、こぞって「お金のなる木」を目指していますから、米国と同じ風潮と言えば同じかもしれません。

学長の選任の方式がそもそも異なりますので、億を超える報酬と国内の国立大学の学長の給与を比較するのは忍びないですが、教授職であれば、比較対象としても問題ないはずでして、上記のニューズウィーク日本版の記事が少し前でしたので、もう少し新しい資料を探していましたら内閣府で立ち上がっていました世界と伍する研究大学専門調査会に比較表がありました。

「総合科学技術・イノベーション会議 第1回 世界と伍する研究大学専門調査会 資料7 世界と伍する研究大学について」(2021.03.24 内閣府)はこちら

その資料のうち、「教員給与の比較」には、国内の国立大学等の教授の平均給与が1,052万円、米国の4年制州立大学の教授の平均給与が1,417万円、4年制私立大学の教授の平均給与が1,504万円となっています。単純比較で400万円から500万円程度の差となっています。

ただし、上記の金額はあくまで平均でして、例として取り上げられている米国の有名私立大学(上記のニューズウィーク日本版で分類が示されているうちの「(1)高度な研究大学」ですね)ともなると軒並み2千万円オーバーがほとんどのようですので、その差はほぼ倍に近いものがありますので、歴然たるものがあります。

しかも、驚くことに米国の場合、上記の内閣府の資料にあるとおり、2004年から2018年の給与の伸びもすごく、4年制州立大学の教授の平均給与が966万円から1,417万円に、4年制私立大学の教授の平均給与が1,020万円から1,504万円になっています。国内の大学の給与はほぼ横ばいにもかかわらずです。

平均賃金の差は大学教員にまで及んでおりますので、学生だけでなく優秀な研究者も国外の大学へ移籍する可能性が高くなっている。早稲田大学の制度導入もこの危機感の表れなのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。

(参考記事)

カテゴリー: 大学

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