今回の物語は題名、装丁の通り、犬、それも盲導犬を題材にした物語です。正直言いますと、私、どちらかと言うと猫派でして、ものすごくフラットな姿勢で読んだつもりなのですが、不思議と各章に登場する盲導犬たちにやられてしまいました。それくらい没入できたというのとあるのでしょうが、盲導犬をより身近に捉えることができたと勝手に思っています。勝手に、というのは実際に視覚障害者と接したことがなく、遠巻きに見たことがある程度ですので、所詮、尻込みをしそうだからでもあります。白杖の方にお声掛けもしたことがないですので。

今回の物語の中心となる登場人物は、元看護師で訓練士見習いの岸本歩美と、超がつくほど優秀な訓練士教官の阿久津の2人。絶妙の間合いで、盲導犬を中心に起こるトラブルを解決していきます。阿久津は人とのコミュニケーションは眼中になく、ひたすら犬とコミュニケーション。その描写も、視覚障害者との接し方も実に自然なんですよね。本当に目に浮かぶんです。そして、接している盲導犬も愛おしくなる。不思議です。

福田和代氏の物語でもそうだったのですが、人は全て事象を経験することなど不可能とは理解していても、こうやって物語に没入し、疑似体験することは本当に貴重なことです。そして、他者に寛容にもなれる。なんせ、体験してるので。

今回の物語では様々なタイプの視覚障害者と盲導犬が登場します。それぞれに抱えた問題もあります。でも、ちゃんと前を向いて歩んでもいます。

オススメでもあり、勇気づけられる物語であります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。

横関大(2021)『わんダフル・デイズ』.幻冬舎

(参考記事)

https://takayamaclub.matrix.jp/columns/reading-impressions-yokozekidai-9/

1件のコメント

30秒間読書感想文:横関大氏『マシュマロ・ナイン』 - 大学よもやま話 · 2023-03-27 22:36

[…] に 30秒間読書感想文:横関大氏『わんダフル・デイズ』 – 大学よもやま話 […]

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