３０秒間読書感想文：横関大氏『忍者に結婚は難しい』

久しぶりに二度読みしました。それでもやはり2度目も没入できました。あらすじを知っていても、ラストを知っていても楽しめる。はーっ、なんという幸福感でしょうか。

小説自体を読み始めて、数年しか経っていないのにこうやって次々と没入感のある物語に出会えるなんて、日本の作家の方達の質の高さと編集者の優秀さに頭が下がります。最初はミステリーから入り、ほぼ乱読状態なのですが、それにしてもこの当たりの多さには感謝しかないです。

で、

今回の物語。もう題名のまんまですが忍者同士の夫婦の物語です。そう！夫婦の物語なんです。先入観なく読んでいただきたいので、プロットについては触れませんが、夫婦それぞれの視点で描かれていながら、そのどちらにも感情移入可能です。そして、これが二度読みの要因なのですが、サブで登場する人物の動きにも要注意です。私が気になったのが、主人公・悟郎の職場の後輩（もちろん、忍者の後輩にもあたりますが）である宇良。そして、もう一人の主人公・蛍の職場の先輩である智代主任。いやぁ、どちらも味があります。

ネタバレにならない程度にひとつだけあらすじを言うと、物語の冒頭から主人公夫婦は倦怠期に入っています。その倦怠期の夫婦に対する宇良と智代主任のアプローチが絶妙なんですよね、全く。宇良の方は今時の若者で妙なところで素直に受け入れる柔軟さを有していて、智代主任はベテランの薬剤師でもって、ベテラン人妻。サブキャラクターなんですが、この二人から見た夫婦それぞれの立場だったり、考え方だったりが、リアリティを産み出し没入の世界へ誘ってくれます。最初は主人公夫婦の視点での没入だったのですが、この二人を通した物語はまた深みがありました。

そうそう、この横関大氏。深田恭子さん主演の『ルパンの娘』の著者でもあるんですよね。今回の物語にも通ずるところがありそうで、今から楽しみです。

ともかく、おススメです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

横関大（2022）『忍者に結婚は難しい』．講談社．