柳広司氏の物語は全て読み尽くしたい。本気でそう思ってますし、いずれの物語もそう思わせてくれるものとなっています。そこで今回は長編デビュー作である本物語を体験しました。正直、冒頭は没頭感がありませんでしたが、後半にかけてグッと惹きつけられました。題材は誰しもが知っているあのトロイア遺跡を伝説から史実として発掘したハインリッヒ・シュリーマンです。なんですが、視点は彼の二番目の妻であるソフィア・シュリーマンでして、その回顧録の体をとっています。それにしてもシュリーマンの発掘までに至るバイタリティには参りました。詳しくは是非読んでいただきたいのですが、1ダースもの言語も扱えることもでき、かつその不屈のバイタリティでその時代でも指折りの富豪となっているにも関わらず、あるかどうかも分からないトロイア遺跡の発掘に着手していきます。

物語はそのシュリーマンがトロイア遺跡の黄金を発掘する瞬間に至るまでに起こった‘事件’について描かれています。ひどく傲慢で独りよがりのシュリーマンのイメージは最初から最後まで変わらないのですが、それもある人物の告白や、ある人物の指摘によって見方が変わっていきます。やはり、視点なんですよね。こう見えていたものがある人が見ると、こう見えるというのはよくあるのですが、それが転換するまでいくと、全く別物になっていく。これが没入感を誘う一つの要因なのでしょう。

あと、やはり装丁には意味がある。

おススメです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

柳広司(2001)『黄金の灰』.原書房.

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