和田竜氏の物語は圧倒的な量の資料の読み込みの凄さを感じさせられる。ゆえの本物感とでも言おうか。

あたかもその時代にそのような人がいたかのような錯覚に陥らせ、それが没入感へと誘う。

今回の主人公は無門。
その名の由来、人となりは是非とも物語で読み進めて読みとっていただきたいのだが、伊賀者の技術の高さと謀略の緻密さ、それと対峙して描かれている武士の堅苦しいほどの真っ当さ。

一言で表現するのは難しいのだが、現代で言うところの傭兵に近い印象を受ける。
主義主張は皆無に等しく、あるのはただ銭勘定のみ。(中には戦いに己を見出している文吾という人物もいる)

自分が誰かに当てはまるというよりも、その時代時代で必死に生きる術を身につけ、生き残るもしくは散っていくことに共感を覚えた感覚に近しい。

今の日本のようにすぐに飢え死にするような時代では考えられないことだが、無門の時代、いや、そこまで遡らなくとも、つい最近まで、人は生命の危険と常に隣り合わせにあったと言える。
事実、世界各地でそのような現状を突き付けられている人々は確かにいる。

そのような状況で「生きること」の意味は、全く異なる。

何に価値を置くのか

人によって捉え方は様々であるとは思うが、他者のために生きるという視点は大切にしていきたい

このことの尊さを感じ入った物語であった。

オススメである


和田竜(2011)『忍びの国』.新潮社文庫.


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