今回はジャケット(装丁)で手に取りました。『ひと』(小野寺史宜著)の雰囲気に似てまして、思わずでした。読み終わった後の感想で言いますと、当然ながら全く異なるストーリーでして、結局、主人公が誰なのかが分かりませんでした。捜査一課でまだまだ見習いの岩隈賢人、同じく捜査一課のあと数年で定年を迎える吉見鉄太郎、題名にもなっているオクトパス、つまり、たこのソクラテス(賢人の母、久子命名です。センスが良いと思います)。

題名の「捜査一課OB」については、物語の中で説明がありますので、そちらでご確認いただきたいのですが、鉄太郎のことを指しています。かと言って、鉄太郎を中心に進んでいる訳でもなく(もちろん、それっぽくはあるのですが)、ソクラテスにはじまり、ソクラテスに終わっているので、ソクラテスのようにも思いますし。でも、登場場面は鉄太郎ほど多くないですし、登場場面で言うと賢人の方がよっぽど多いわけですから、賢人のような気もしますし。その辺りを考えていくと結局、結論がつきませんでした。敢えて言うならば、3人(2人と1匹)の1チームで事件を解決ということでしょうか。

気づかせてくれたことは、一人では視野狭窄になるということ。面倒でも他者の意見や視点を取り入れる方が、一見すると時間がかかるように感じたとしても、結果で見ると、一番近道だったということです。何でもそうなんですよね、きっと。自分の視野と視点のみだと良いところまで行くんですが、そこに相手の立場に立ってみたり、他の人の意見を参考にしてみたりすると、グッとレベルが上がることが本当に良くあります。そのためにも耳順や柔らかい心を持つ必要があります。そう言った意味でも、この物語では、改めて「あー、そうだよなー」と気づきを与えてもらいました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

富樫倫太郎(2021)『捜査一課OB ぼくの愛したオクトパス』.中央公論社.


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