正直、この装丁の書籍を電車の中で読むのは壮年期の私にとってハードルが高いのですが、読まずにいられませんでした。それくらい没入できました。今回は3作目。孤高の女王とはこの物語の第一作目から登場している人物で高校女子カヌー界のトップを独走している利根蘭子のこと。でも、かと言って、物語の全編を引っ張っているというわけではなく、あくまで主人公はながとろ高校カヌー部の4人。そこへ利根蘭子が乱入してきて、部員それぞれの自我が触発されていく物語となっています。

前作までで登場人物の見えてこなかった点が深堀りされていて、それが部員の成長の触媒となっています。これを1作目から想定していたのだとすると、恐るべし武田氏。もはや感服いたします、その才能に。

単なる青春ものではなく、これって社会人にも当てはまることだよなとも思いつつ読みながら、それでもやはり青春ものって好きなんだなぁとしみじみ思ってしまいました。全て言葉で表現できないんですよね、当然ながら。感情が先に立ったり、考えもしなかった反応を受けて、どう対応したらいいのか分からなかったり。そういうことって、実は大人になっても少なくなるにせよ、確実にあるわけで、そこは変に大人ぶらずに素直に受け止めて対処した方が結果で見ると上手く収まるところに収まったりするもんなんですよね。

それを情景描写で表現しているところが前作に引き続き、心地よかったりします。あぁ、こういう場面なんだろうなぁとイメージできるというか、映像が浮かんできます。今作では、黒部舞奈と鶴見希衣の軸が中心でしたが、他の部員の軸も見てみたい。そして、スピンオフで良いのその他の登場人物の物語も見てみたいと思いました。

ドラマや映画になりませんかね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

武田綾乃(2020)『君と漕ぐ3―ながとろ高校カヌー部と孤高の女王―』.新潮文庫nex.


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