本日の物語は、武田綾乃氏の『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』です。

私、実は青春ものの物語に結構ハマる傾向にありまして、おそらく、自分が地味な青春を送ったという影響なのでしょうが、部活動などに一生懸命な物語を読んでしまうと思わず応援してくなります。今回の物語とはまた全く趣が異なるのですが、誉田哲也氏の「武士道シックスティーン」を想起してしまいました。

主人公は誰だか分かりません。というのも章ごとに登場人物それぞれの描写があり、丁寧に描かれています。強いて言うなら、鶴見希衣。彼女はながとろ高校2年生で、カヌー部の部長です。でもながとろ高校カヌー部は鶴見希衣と天神千帆の二人で立ち上げた部なので、3年生はいません。そこに湧別恵梨香と黒部舞奈が入部してきます。

「君と漕ぐ」というタイトルにも勿論、意味があり、それが最後まで描かれているところも読んでいて没入できた要因のひとつでした。

そして、私が一番、没入できたのは情景描写でした。今までは登場人物に感情移入をしてそこから没入していくことがほとんどでしたが、この物語では情景描写からでした。正直、最初は、なぜ、これほど情景を丁寧に描写するのかと違和感があったのですが、何かが引っかかり、いつも以上に丁寧に読んでいくと、言葉で描かれた情景が染み入ってくる感覚が沸き上がりました。初めての経験でした。

続編もあるようですので、楽しみです。

ともかく、おススメです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

武田綾乃(2019)『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』.新潮文庫nex.


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