If you want to bring happiness to the whole world, go home and love your family.
Mother Teresa

世界中に幸福をもたらしたいのなら、家に帰って、家族を愛しなさい。
マザー・テレサ


自分の父親が実は別にいる。
それだけでも衝撃なのに、その父親はとある大企業グループを率いる総帥だったら。

主人公・植松英美は、母親から実の父親は別にいることは聞いていたが、誰なのかは聞けずじまいで、母親が急死してしまう。

その実の父親が何者かにより射殺されて刑事が家に訪問したことから物語が動き出す。

物語の視点は主人公の英美だけでなく、実の父親である南郷英雄にゆかりのある人物の回想シーンが巧みに織り込まれている。

そして、英美が英雄を射殺した犯人に辿り着きたいと行動するが故の苦悩と障害を乗り越えていく過程が英雄の生きてきた行動力とシンクロしていく。

戦後の混乱期に成り上がった者の野望と狂気。それは決してその時代だからというよりもおそらく、現代においても通じた要素なのではないか。

それにしても、英美の諦めない姿勢には学ぶことが多い。その背景にあるのは英美をさりげなく支えている異父兄弟の正貴と瑞希、そして叔母の春子。彼女らの家族愛があってこそ。その家族愛がじんわりと南郷家にも浸透していく様も味わっていただきたい。

オススメ。



真保裕一(2022)『英雄』.朝日新聞出版.


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