It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.

生き残った種というのは、最も強かった訳ではない。また、最も賢かった訳でもない。変化に対する適応能力が高かったのである。

チャールズ・ダーウィン


「戸籍」

普段、「戸籍」を意識して生きている人がどれくらいいるだろうか。

では、「先祖」は?

信心深くない人でも、お彼岸になれば、墓参りに行くかともなるだろうし、お盆になれば、よほどの都会でないかぎり、地域のお盆の雰囲気を感じるもの。

私としても、意識するのは、父母、祖父母あたりまで。それ以前となるともはや「先祖」という括りに入ってしまう。

自分が生きているのは確実に先祖が生きているからであり、その人達が命を繋いでくれたからこそ、私が存在している。

顔も知らない、けれども、しっかりと縁は感じる存在。思えば、不思議な存在とも言える。

今回の物語は、新川氏の今までの物語とは少しテイストが異なり、主人公が定まっていない設定。もちろん、必要があってだが。

主人公・邑楽風子は幼い頃に母親に捨てられ、名前も忘れ、役所に命名される。今は先祖を辿る専門の探偵をして自立している。
5つのオムニバスになっており、依頼人の依頼内容を通して、風子は自分の置かれている状況をシンクロさせつつ、先祖を辿っていく。
戸籍という確立された制度のイメージとは裏腹に戦争による焼失など実はそれほど完全でもないことに新鮮な印象を受けつつ、そのことにより、人生を翻弄されている人々がいることに軽い衝撃を受ける。どこか人任せ、役所任せにしているところがこの問題の肝なのかもしれない。
自分であれば、どのように考え、行動を起こすだろう。そう考えているうちに物語に没入していた。

今回もオススメ。



新川帆立(2022)『先祖探偵』.角川春樹事務所.

(参考記事)


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