隔靴搔痒

いきなり、四文字熟語からで、文字通りですが、痒い所に手が届かない、なんとももどかしい様を表している言葉で、元は「(棒(ぼう)を掉(ふる)いて月(つき)を討うち、靴(くつ)を隔(へだ)てて、痒(かゆ)きを搔(か)くは、甚(はなは)だしき交渉(こうしょう)有(あ)り)」からです。

とにかくもどかしい。ひたすらもどかしい。

今回の物語を読んだ感想です。そこに自己投影しているからこそ没入感を感じられたのでしょうが。とにかくもどかしい。でもまぁ、ある程度の年齢を重ねた人ならお分かりかと思いますが、自分の人生、思い通りに行くことの方が得てして少なかったりします。

今回の物語の主人公・白熊楓は警察官を目指していましたが、とある事情により方針転換をし、公正取引委員会に就職します。

公正取引委員会?

私自身も読む前までは新聞などで文字を見る程度で、実際に何をしている役所なのか知りませんでした。ご安心ください。その辺りの説明も含めて、読んでいくと理解できる作りとなっています。なにせ現場の職員の方の物語ですから、実際の業務も含め、どのような役割を担っているのかも読み進めていけば、自ずと理解できる物語となっています。

白熊楓は、目指していた職業とは異なる職を得て、それでも前向きに仕事に向き合っていますが、その前向きな姿勢をくじかれる出来事があり、それが後々まで尾を引く形となっていて、種々の葛藤にさいなまれます。決して、読後がスッキリという訳でもないのですが、なぜか続編を読みたくなりました。出来れば、その後の白熊楓で見てみたい。そう思わせてくれます。あとは、同僚であり、もう一人の主人公である小勝負のキャラクターが秀逸だからかもしれません。圧倒的なエリートだからこその葛藤(非常にクールでそのような描写はほとんどないのですが)があり、白熊とは対照的な人物なのですが、共通するものがあり、それが互いを惹きつけているのではないかと思われます。

皆さん、日々、もどかしいことに遭遇したとしても、一歩ずつ歩みを前に進められているかと思います。白熊楓も日々悩み、足掻きながら自分の行く先を見つめていますので、自身をシンクロできるかと。

そう言えば、ゴールデンタイムのドラマとなっていましたね。残念ながら私は視聴していないのですが、原作と見比べてみるのも面白いかも。新川氏の物語はドラマ化しやすいのかも。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

新川帆立(2022)『競争の番人』.講談社.

(参考記事)


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