本日の物語は、小野寺史宜氏の『片見里荒川コネクション』です。

 物語を読んでいて、グッとくる言葉、フレーズってないですか。毎回ではないのですが、その言葉にふっと気持ちを持っていかれることがたまにあります。それは、この物語を読んで良かったなと思える瞬間でもあります。例によって、ネタバレになるので、記すことはしませんが、この物語では主人公のうちの一人である中林継男の言葉にやられました。この言葉を選ぶ、選べるそのセンスが羨ましいです。小野寺氏の物語は幾つか読んだことがあるのですが、本当にそのシチュエーションに実在しそうな絶妙な人物描写が特徴だと私は思っています。実在しそうな。この表現で如何にこの物語に没入できるかを物語っているつもりです。ついぞ、引き込まれてしまい、一気に読んでしまいます。

 

 目次を見ていただいたらすぐに分かるのですが、主人公は2人、そして1月から12月までの物語。75歳の中林継男、22歳の田淵海平。それぞれの視点が物語が進んでいき、交わり、収束していく。ですが、小野寺氏の他の物語もそうなのですが、「続きへの余白」をたっぷり残しているんですよね、読者に。物語は終わるんだけれども、その続きは読者自身の想像力に任せてもらえる。だから物語は終わらない。という形態になっています。

そして、主人公以外の登場人物の設定も絶妙。世知辛い世の中だけれども、それぞれの立場からさり気なく主人公たちをサポートし、温かく見守る。これって、ちょっとのこと、些細なことなんですが、なかなか出来ていない。自分もしていかなくてはと思ってしまいます。

ペイフォワード(Pay it Forward)という言葉をご存知でしょうか。一度、検索してみてください。この言葉を思い出させてくれる物語です。おススメです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

小野寺史宜(2021)『片見里荒川コネクション』.幻冬舎.


1件のコメント

読書感想文:小野寺史宜氏『ひと』 - 大学よもやま話 · 2021-10-17 22:36

[…] 読書感想文:小野寺史宜氏『片見里荒川コネクション』 カテゴリー: 読書感想文 タグ: ひと小野寺史宜 […]

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