自分がこの立場に置かれたらどのように振る舞うだろうか。
そう考えている時点で没入は出来ていないのだが、先を読み進めたくなる物語。

主人公は、警視庁捜査一課の刑事・犬養隼人。
バツ2で、子どもは娘がひとり。この娘が難病に罹っていて長期入院中なのだが、そのことが犬養を予想もしない方向に引き寄せてしまう。

例によって、物語には触れずにおくが、既視感のある場面が幾度も出てくるのは自分も知らず知らずのうちにマスメディアでその場面に触れているからなのだろう。

思考が停止する場面を導出し、そこに漬け込む手口は昔からあるし、これからも無くならないのだろうが、それにしても、弱みを絶妙についてくるやり口は恐いほど臨場感がある。

そして、その状況に警察がおいそれと手を付けることがためらわれる設定も臨場感がある。

結局は救いをどのように捉えるかは各自の姿勢や思考に帰結するのだろうが、私にとっては、主人公の犬養と娘の沙耶香の関係性が救いとなった。子どもは親には遠慮なくぶつければよいし、親は親でガッツリ受け止めつつ、遠慮なく返せばよい。当たり前のことを当たり前のように積み重ねていくことが、救いとなることもある。

中山七里(2021)『ラスプーチンの庭』.KADOKAWA.



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