またもや、万城目学氏に吸い寄せられた。
最初は、中島敦?と思ったが、全く異なる。どちらかといえば、芥川龍之介か。
オムニバス形式となっており、いずれも中国史に関連する物語。
人生においては、あれが分岐点だったと思える時点が存在する。
その時点で自覚することもあれば、後から振り返るとあれが分岐点だったのだなと思うことも。
この物語は明らかに前者。
主人公たちはそれぞれの立場に立ち、それぞれの判断を迫られる。そして、ある決断をする、もしくは、決断を促す。
そのことによって、見えてくる視界が異なってくる。おそらく、周りは一緒のはずだが、自分の立つ地点、視座が変化したことにより、視えるものが変化を来たす。
いずれの物語もその変化に行き着く物語である。
この中では、やはり『悟浄出立』が一番刺さる。
何者でもない自分。
周りの者に対する嫉妬を持っている自分。
でも、変化の兆しを自覚していく様は苦しいが、爽やかでもある。
新年度、きっと様々な境遇に置かれている人は多いはず。
期せずして、という人もいるだろう。
決して、下を向くことなく、顔を上げて前を向いてほしい。
そのうち、一歩を踏み出せるはず。
そんな気分にさせてくれる物語たち。
ということでオススメ。
万城目学(2014)『悟浄出立』.新潮社.
カテゴリー: 感想文(読書・映画諸々)
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