中学生の時、社会の授業でモンゴル帝国を知り、その壮大さと苛烈さと寛容さに魅了され、もう何十年も経った。
誰しもが、一度は歴史上の人物を見定め、憧れや畏敬の念を抱き、心に留め置いておくものである。
でない人がいるなら、見定めておくことをお勧めしたい。自身の寄る辺となる人物に出逢えるものから。
人生も終盤に入った今の時期だからこそ、感じ入るものもあるし、もっと若い時期にこの物語と出会っていれば、何か変わっていたかもしれないという思いもある。
これほど長い物語を今まで読んだことはないし、これからもないように思う。
ただし、気付けば十七巻という感覚なので、読み始めれば時を忘れるはずである。
この物語には、チンギス・ハン自身の人生が詰まっていそうで実は詰まっていないのではないか。確かに彼の一代記ではあるが彼を取り巻く人々の物語であるように思える。それほど、多くの魅力的な人物が登場しては消えていく。
一代でこれほど広範な領地を獲得し、国を統一した例は歴史上、彼のみであるが故、また、関わる人も自ずと多くなるのだろう。
常に遙か先を見つめ、人物を見つめ、揺るがない信念を積み上げていく。
この物語は、人間がこの世に生を受けて、この世を去るまでにこれほどのことが実現可能であることを示してくれている。
オススメである
北方謙三(2023)『チンギス紀 十二 天地』.集英社
カテゴリー: 感想文(読書・映画諸々)
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