ハイブリッド・セオリーという言葉にまず引っ掛かりを覚える。
セオリーということは何かしらの理論であり、どこかで耳にしたことはあったかもしれないが、思いあたる定義もなかったので、取り敢えず手にとってみる。

文体はやや砕けた感じで、主人公の郷間彩香の心情がそのまま文体に現れているよう。言うのを忘れていたが、これは続編、しかも3作目であるので、途中から読むのを好まない方は1作目から読み始めることをお勧めする。

しかし、全く予備知識がなくとも楽しめるのは著者のエンターテインメントへの姿勢を現していて好みである。これだけでも充分楽しめる。もちろん、1作目から読みたくもなる。

物語は一本の匿名の通報から端を発する区長の汚職捜査からスタートする。捜査二課というのはそういう事件を扱う部署で、郷間班はその課のひとつでなかなかに個性的なメンバーが揃っている。それを束ねる主人公もなかなかに個性的。事件の要素は読み進めるうちに段々と明らかになっていくが、主人公も感じるある違和感、というか気持ち悪さを読者も共有することとなり、それが最後に収束していくのはさすがである。



梶永正史(2017)『警視庁捜査二課・郷間彩香 ハイブリッド・セオリー』.宝島社.


0件のコメント

コメントを残す

アバタープレースホルダー

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です