本日の物語は、陳浩基氏『ヨルムンガンド』なんですが、この物語、短編集の1つでして、それも島田荘司氏の選でしたので、期待大にして拝読したのですが、その期待を大いに上回る物語でした。

 物語の登場人物は主に3名。カルヴィン、オズワルド、マーティン。カルヴィンとオズワルドはアジア系アメリカ人で、7歳の頃からの幼馴染で大学も同じ。二人は超理系で、普段の会話も理系な内容で、パラドックスやタイムトラベルを理論的な観点から論じあうというのが言わば日常となっている仲。

 しかし、ある出来事によって、ある意味、別の人生を歩むことになるが、ある時に交差し、また、離れていくという設定です。でも、その交錯と別離の設定が巧み過ぎて、一回一回頭をリセットしながら読み進めないと、危うく置いていかれそうになるところが、この物語の凄さと言えば、凄さです。最初から最後まで緩むことない時間と空間の歪みに引っ張られたまま、ラストを迎えます。

完全に没入しました。最初は難しそうだからどうなのかなと。出てくる単語も本当に理解しようとすると調べないと分からないレベルでした。でも、没入できるという不思議な体験でした。短編とは思えないほどの深み。設定が巧み過ぎてですかね、確認の意味も含めて、再読を決意させられました。

しかも、この書籍、別の短編も読めてしまうというお得感もあって、楽しみで仕方ありません。

ともかく、おススメです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

島田荘司選(2021)『日華ミステリーアンソロジー』.講談社.


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