禍福之所倚、福禍之所伏 (老子)

禍(わざわ)いは福の倚(よ)る所、福は禍の伏す所なり

福の中に禍が潜み、禍の中に福が潜むように、災いと幸せは順繰りにおとずれるもの

禍福倚伏(かふくいふく)


ロシアがウクライナに侵攻しているこのタイミングでこの物語を読めたことが幸なのか不幸なのか。

国内にいると他国の内紛も含め、戦争が遠くに感じられていたが、ウクライナ侵攻を機にグッと距離を詰められた印象を持っている。
ましてや、要人テロがこれほど立て続けに発生していることも社会の空気感としては、先の大戦前夜の雰囲気もこのようだったのではないかと思い至らされる。

主人公の少女・セラフィマは独ソ戦の最中に家族を、住んでいた村そのものを失う。

当然、喪失感をもたらした敵に対して激しい憎悪を抱き、入隊を選択し、狙撃兵として復讐のための腕を研いていく。

ただし、単なる復讐劇でないところが、第11回アガサ・クリスティー賞大賞を受賞している所以。

敵は誰なのか。
セラフィマが鮮やかに脱皮していく様を堪能しながら、追っていただきたい。

どのような極限状態に置かれていても、人は人足りえるし、人だからこそ陥る局面もある。

戦争を身近に感じている今だからこそ、極限状態を一端に触れ、日々の生活の糧としたい。単なる物語ではなく、灯火となる物語でもある。

オススメである。


逢坂冬馬(2021)『同志少女よ、敵を撃て』.早川書房.


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