本日のテーマは、私立大学の公立化戦略についてです。つい先日、山口県の徳山大学が公立大学法人化されることがニュースになっていましたね。新しい市長が徳山大学の公立大学化を公約に掲げて立候補されて当選したので当然と言えば当然の成り行きでしょうか。

徳山大学公立化検討に係る市民説明会等の開催・パブリック・コメントの実施について(周南市HP)はこちら

結論から言うと、入学定員の充足の1点から見れば、劇的に改善します。過去の事例がそれを物語っています。

過去の事例で言うと、高知工科大学は公立化初年度の倍率が12.6倍で、その前年度が1.6倍。すごいですよね。教育内容は大きく変更していないのに、なぜ、そんなに激変するのか。

公立化効果の「見える化」に関するデータ(高知工科大学HP)はこちら

ひとつには公立大学の学費の低さです。これはもう明らかでして、私立大学とは比較のしようもありません。その分、税金が投入されているのですが、その辺りは県議会・市議会で議論されているでしょうから、地元住民の方々も納得の上でしょう。

また、地方では公立大学という冠は未だ健在でして、高等学校の進路指導でも昔ほどではないにしろ、国公立大学への進学者数がある程度の実績とみなされていますし、保護者の方々も高等学校を受験の際には国公立大学の進学状況を確認しているはずです。見かけたことはありませんか、○○大学 ◯名合格とかの看板。何気ない風景ですが、あれが進路の根強い意識の表れでもあります。

 だったら、良いことづくめではないかと思われるかもしれませんが、陽があれば、陰もあるわけでして、一つはなぜにそんなに学費を低く抑えることができるのか。先ほども言及しましたが、大学を運営する上で必要な経費が国公立大学と私立大学でそれほど差があるわけではありません。人件費にしろ、施設設備にしろ、大体同じです。

では、学費が収入のどれくらいを占めているのか。大体ですが、私立大学の場合、収入の7割が学納金で、残りの3割が国庫補助金や寄付金等です。国公立大学の場合はその逆と思っていただけたら、良いと思います。

では7割の助成金はどこから出ているのか。国立大学は当然、国=文部科学省から出ていますし、公立大学は設置主体である地方自治体から出ています。ここで注意しなければならないことは現在、地方自治体もそのほとんどが財政難です。実は国もですが。(国債の発行額を調べていただければすぐに分かります)

そのような財政状況の中、私立大学を公立化することのリスクについて本当はもっと議論すべきところです。公立化することによって、若者は地元に本当に定着していくのか、地方自治体の財政健全化は可能なのか。将来世代への負担は過度になっていないのか。人口減少期にある日本において、志願者の母数である18歳人口は着実に減少していくという予測可能な未来があります。

公立化すると当然、地元でない志願者も増え、当然割合的に県外出身者も増えていことも予測されますし、実際そのようなことが起きています。

そもそも大学がその地域に必要なのかも真剣に議論されるべきでしょう。

そんな中、地方にありながら私立大学でしっかり地域に根差した活動を行っている大学もありますが、それはまた別の機会に。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

カテゴリー: 大学

1件のコメント

徳山大学が周南公立大学へ設置者変更を行います - 大学よもやま話 · 2021-10-19 23:33

[…] 私立大学の公立化戦略の功罪(メリット・デメリット) 大学間連携としてのオンライン合同合宿は有効か カテゴリー: 大学 タグ: 周南公立大学徳山大学武蔵野大学アントレプレナーシップ学部私立大学の公立化 […]

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