今回のテーマは、修士課程在籍者を対象とした調査結果についてです。

「「修士課程(6年制学科を含む)在籍者を起点とした追跡調査(令和3年度修了(卒業)予定者)」[調査資料 No.323]の公表について」(2023.01.31 科学技術・学術政策研究所)はこちら

科学技術・学術政策研究所(文部科学省直轄の国立試験研究機関)は2020年度から修士課程在籍者を対象として、経済的支援状況等の調査を行っており、今回で2回目です。

修士課程在籍者の現状を知るには十分な内容となっていまして、かなり切実な状況が読み取れます。着目していただきたいのは、「課程学生」の項目です。一概に修士課程在籍者と言っても、

・課程学生

・社会人学生

・外国人学生

・6年制学生

と区分が分かれていまして、社会人学生も増やす必要性は理解している者の、現状ではこの調査で言うところの「課程学生」の割合が多くなっているはずです。その「課程学生」の実情として着目したのが、「借入金の有無」です。その数、約4割超の学生が借入金があり、そのうち300万円以上の借入金がある学生が約4割弱となっています。その結果が「博士課程ではなく就職を選択した理由」につながり、これは全体の数値ですが、6割の学生が「経済的に自立したい」という選択肢を選んでいるわけです。

これは本当に切実な結果ではないかと思っていまして、研究したいけれども、このまま続けていては借金が増えることは目に見えているので博士課程まで進学する気になれないということが読み取れます。

では、国としてどのような対策を考えているのか。

既に大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議が立ち上がっており、検討がなされており、12月に報告書がまとめられています。

「大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議」(文部科学省)はこちら

「大学院段階における「授業料後払い」制度(在学中は授業料を徴収せず、卒業後の所得に応じて納付する新たな制度)の創設について(報告)」(2023.12.23 文部科学省)はこちら

結論は表紙に記載されていまして、

「「経済財政運営と改革の基本方針 2022」において、在学中は授業料を徴収せず卒業後の所得に応じて納付を可能とする新たな制度を大学院段階において創設することとされ、教育未来創造会議第一次提言工程表において、当該制度を令和6年度に実施することとされた。」

とあります。

要は、「授業料後払い」制度が採用されるようになります。つまり、学生が納めていた授業料分を学生支援機構から大学に納入され、卒業後、学生が学生支援機構へ支払っていくということです。

また、卒業時点における業績優秀者には全部又は一部納付が免除される優遇措置も検討されるそうです。対象となる学生は制度の実施年度が令和6年度(2年後です)ですから、現在3年次生ですね。

これが果たして、大学院への進学に対する促進剤となればよいですが、例えば、学部で奨学金を借りている学生が果たして借金をしてまで、大学院に進学するのかどうか。先の調査でも理工系であれば修士課程までは進学したとしても博士課程後期まで進学しようと思うかどうか。それであれば、前回の記事でも紹介しましたとおり、NECと組んだ東京工業大学のプログラムの方が安心して研究できそうな気もします。是非とも制度実施後も調査を実施していただき、検証していただきたいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。

(参考記事)

https://takayamaclub.matrix.jp/columns/scholarship-3/
カテゴリー: 大学

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