大学の共同研究と言えば、学内の産学連携センターなどの部局が担い、そちらにコーディネーターなり、弁理士なりが配置され、教員のシーズと企業等のニーズとのマッチングが行われているイメージですが、この度、浜松医科大学ではわざわざ出資して産学官連携実施法人を立ち上げたというプレスリリースが出ています。

「浜松医科大学産学官連携実施法人「株式会社はままつ共創リエゾン奏(かなで)」の設立について」(2025.05.14 浜松医科大学)はこちら

はて?

内部機能については、一旦廃止し、外部に設置するということに共感を覚えつつも、もやもやしていましたので、少し調べてみますと、ありました。既に5年前には共同研究に係る外部機能についての検討がなされていまして、そこに至る経緯まで記載がありましたので、共有まで。それにしても、こういった動きはインフラ整備と同じですので、法令改正も含め、よほど先を見越していないと描けない、いやそこにこそ、官僚機構の優秀さを感じるわけです。さすが内閣府!

「大学・国研の出資機能の拡大による産学官連携の活性化について」(2019年9月30日 内閣府)はこちら

さて、上記の資料には、

「2025年度までに企業から大学・国研への投資を2014年度の3倍にすることが政府目標とされているが、これまでの伸び率のままでは目標達成も難しい状況」

とあります。

ちなみに、2014年度の投資額が1,151億円で、2025年度の目標額が3,453億円と設定されています。

そこで、スピードを急速に上げるには、抜本的な改革が必要と言うことで、外部機能の設置に目が向くわけですが、そこに至るまでの現状課題のまとめが秀逸です。

主に人材面とマネジメント面の2点でまとめられていまして、そちらが以下の通り。

(人材面)

・大学・国研の組織全体の人事・給与体系が適用され、産学官連携に特化した職務や能力に見合った処遇が困難

・研究者の産学官連携に対するインセンティブ不足

・専門の研究マネジメント人材が不足

(マネジメント面)

・大学・国研が目指す研究と企業ニーズが必ずしも一致しない

・組織が大きいため意思決定に時間がかかる

・小規模の大学・国研では単独での産学官連携機能の確保が困難

これって、規模の大小はもちろん、言及されていますので、関係することもあるのですが、どの大学においても、思わず頷いてしまう指摘でして、そうは言ってもという内容ばかり。

決して、外部機能に移したからと言って、すべてが解決、すべて機能するという訳ではないと思いますが、特に発足当初は、それでも外部機能を立ち上げることによる機動性の確保や飛躍的に伸びそうな予感もいたします。あとはどのような人材をその組織に配置するかにかかっていますから、結局は大学のマネージャー層による経営の巧拙が出てくるとは思いますが、それでも門戸は解放されたといっても良いのではないでしょうか。

ということで、浜松医科大学の動きにはこのような設置背景がありつつも、新しい取組みと言うことで、今後の動向に注目していきたいところです。

ちなみに浜松地域の特性を活かした研究所も立ち上がっていますのでこちらも注目していきたいところです。

「光医学総合研究所(Institute of Photonics Medicine)を設置しました」(2024.04.10 浜松医科大学)はこちら

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。

(参考記事)


1件のコメント

大学と自治体と産業界との連携は地方であればあるほど有利な側面があります – 大学よもやま話 · 2024-07-16 21:03

[…] 大学の共同研究も外部組織で運営する時代が到来しております カテゴリー: 大学 タグ: 同志社大学 […]

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