瀬尾まいこ氏の物語を読むのは2作目ですが、実際にいる人物を描いているような錯覚を受けてしまうほどでした。なぜそのように感じるのか。ズバリ、「ペース」だと思っています。この物語、実にペースがゆったりとしているんですよね。私が没入しやすい物語はとにかくペースが速い。登場人物の会話だったり、場面の以降だったりが速い。おそらくそれが普段の私のペースと合っているだと思います。せっかちですからね、私。ペースが合うこと、おそらく波動が合うことでその物語に没入出来るのだと思います。

で、この物語は、主人公の清(キヨ)の思考のペースに合わせて一人称で進んでいきますので、私からすると本当にゆっくりと進んでいきます。でも、そのペースが心地いいんですよね。最後には本来の人間のペースがこれなのかなと思ってしまいました。急かされることなく、毎晩、楽しみに読み進めることが出来ました。きっと、瀬尾まいこ氏のファンはこのペースと自分のペースが合っているからなのでしょう。

主人公の清は高等学校の教師で、熱血というわけでもなく、どちらかというとあまり進んで教師と言う仕事をやっているような印象を受けません。部活動の顧問もどちらかというと押し付けられた文芸部。ですが、文芸部の唯一の部員である垣内君、お付き合いをしている浅見さん、そして清の弟である拓実君。どのキャラクターも清の内面を引き出すのに必要なキャラクターで、それぞれとの会話で清の様々な内面が滲み出てきます。その中でも私が最も重要だと思ったのが弟の拓実君。底抜けに優しく、どこまでも姉の清の味方。そんな人が一人いるだけでどれだけ心強いか。マイペース過ぎるところも憎めない。

自分の周りにもおそらくそれぞれの内面を鏡のように映してくれる人が誰しもいるはず。時にはその内面を直視し、卒業しなければいけない時も来ますが、そうやって自分も変化していくものです。その変化を良い変化へと持っていけるかどうかは自分自身にかかっているでしょうし、拓実君のような存在がいるかどうかということも大きいのではないかと。

と言うことで、おススメです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

瀬尾まいこ(2003)『図書館の神様』.マガジンハウス.


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