寂寥感に見舞われました。いや、語感からするとネガティブな印象を受けるかもしれませんが、決してそうではなく、誰しもが老い、そして否応なしに世代が代わっていくのだと、しみじみとした感じです。
モンゴルを制圧したチンギス・カンは南の金国をじっくりと攻め、自国領としました。その間、金国の役人(私の好きな耶律楚材です)の視点や孫のヤルダムの視点で物語が進んでいくのですが、今回はチンギス・カンの視点が多かったように感じました。終わりに近いということなのでしょうね。遊牧の民としての人生はほんの僅かな時間しかなく、ほぼ戦いに明け暮れ、死ぬ寸前の戦いも幾度も経て、仲間も戦いで失っていく日々。最後に描かれている様はそのような人生を振り返っているようにも受け取れました。
だから、なんでしょうで、それまで敢えて距離をとっていた人たちとも共に食事をし、盃を酌み交わすという場面が今物語では幾度も出てきます。
やはり、終わりに近づいているのでしょうね。寂寥感です。
最後に様々な視点で描かれているチンギス紀ですが、私が好きなのは森に籠っているトクトアであり、アインガです。第一線で戦っていた現役時代とは対照的に森では必要な分だけ狩り、己と向き合い続ける。俗世間にまみれているかこそ憧れる生き様です。
ともかく、今巻もオススメです
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
北方謙三(2021)『チンギス紀 十二 不羈』.集英社.
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読書感想文:北方謙三氏『チンギス紀 十六 蒼氓』 - 大学よもやま話 · 2023-08-14 11:52
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