今回は久しぶりに柳広司氏の物語です。私、入りが『風神雷神』でしたので、『ジョーカー・ゲーム』で呆気にとられ、続くシリーズの物語ですっかり魅了され、この多彩な才能は何だろうと思っていたところに、今回の物語でまたもや違う側面を堪能することが出来ました。

 主人公(というよりも聞き役ですね)は、ロサンゼルス・タイムズの記者でして、その記者がシートン翁のエピソードを聞いていき、物語が進んでいくという形式をとっています。ですが、シートン動物記の予備知識不要です。恥ずかしながら、シートン動物記を一話も読んだことのない私ですが、1つ1つの物語に没入することが出来ました。単にシートン翁が推理しているだけでなく、そこには必ず動物が絡んでおり、というよりも寧ろ、動物が絡んでいるからこそシートン翁は推理できているといっても過言ではありません。

 話の舞台は北米大陸ですので、私に馴染みの土地のはずなのですが、なぜか情景が頭に映像として投影されてきました。本当に不思議。狼、リス、猫、熊。猫以外は動物園に行ったときに見かけたくらいで、狼に至ってははっきりと見た記憶すらありません。なのに、それぞれが目に浮かんでくるという不思議。これが文章・言葉の凄さであり、恐ろしさです。昨今は何かと映像が主流の時代になってきていますが、没入感でいうと実は文章の方が上なのではないかと思っています。もしかしたら、映像を視聴することと文字を読むということでは脳の違う機能に作用しているのかもしれません。

 

 ひとつでも多くこのように没入する物語に出会っていきたいです。という訳でこの物語もおススメです。

 ちなみに、この物語を読んだ後はシートン動物記を読んでみたくなるものです。これも柳広司氏の思惑通りなのかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

柳広司(2009)『シートン(探偵)動物記』.光文社.

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1件のコメント

1分間読書感想文:柳広司氏『黄金の灰』 - 大学よもやま話 · 2022-02-25 23:20

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