吉川英治氏の物語初めて読みました。『宮本武蔵』などを書かれた有名な方とは存じ上げていたのですが、なぜか読まずにここまで来てしまいました。確か高校生時代に勧められたことがあったような気もしますが、文芸作品のようで手が出せずにいました。まだ、早いのではないかと。

 読んでみての感想は…。全く敷居が高くないです。没入感もスゴイです。しかもこの物語って昭和18年に連載が始まったようで、とても第二次世界大戦がはじまる前に書かれたとは思えませんでした。言葉は多少古文に近いですが、なんのそのハードルをも上回る疾走感がありました。読むのが楽しみになる物語に出合うのは本当に貴重な体験で、そのような体験をしてしまうと次に読む物語にもその体験をついつい期待してしまいます。その期待を裏切らないです、この物語は。

 主人公は黒田官兵衛。言わずと知れた戦国随一の軍師で、その黒田官兵衛が仕えている小寺家が毛利勢と織田勢のどちらかにつくのかという評定の場面から物語はスタートします。

 そこから羽柴秀吉、竹中半兵衛、織田信長との出逢い、有岡城への幽閉、救出後の織田家の大名となるまでが描かれています。「禍福は糾える縄の如し」と竹中半兵衛に言わせていますが、黒田官兵衛の前半生はまさに文字通りで、智者と言えども、すべてが思い通りに進まない、だけれども、いや、だからこそ、諦めずに歩を進めていって欲しいと応援されている気分になりました。戦国時代は一歩間違えれば、すぐに「死」という現実が突き付けられているわけですから、現代とは心の持ちようも異なるとは思いますが、それでも、大切にしなければならないこともあるわけで、「誠」を尽くすということの大切さを痛感させられました。おススメです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

吉川英治(2013)『黒田如水』.新潮社


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