読書感想文：福田和代氏『生還せよ』

　本日の物語は、福田和代氏の『生還せよ』です。

読み始めてしまったぁ、とすぐに思いました。シリーズものなんですよね、この物語。つまり、前の物語を読まずして、この物語に突入したもので、どうしても読み進めるのが躊躇されてしまいました。ということで本来であれば、没入できそうな物語でしたが、そういったストッパーもあり、残念ながら没入感は起こりませんでした。惜しいというか勿体ない感じが残りました。

主人公は、安濃将文。所属は航空自衛隊で、現在は内閣府遺骨収容対策室に出向中の身分とされています。

先の大戦によって日本に課された二つの事業である遺骨収容および化学兵器域作業がこの物語の根底にあり、おそらく作者が提示したいことのひとつでもあると思われます。どちらもうっすらと頭にはありますが、これほどの事実と現に行われているであろう事業に思いを馳せるとこの物語の本筋ではないものの深く頭をもたげてしまいます。

主人公の安濃は前者の遺骨収容事業に携わっている名目でありながら、全く異なった

任務を今回、請け負うこととなり、これまでと同様かなりというか、ほとんど命を落としても不思議ではない状況に自ら進んでいきます。まぁ、行かざるを得ないという方が正しいのかもしれません。

いつも最後は独りというのが、主人公の心境のようで、だからこそこれまでどのような状況に遭遇してきたのか気になって、気になって。ということで、当然、これよりも前の物語にも興味が俄然わきましたので、このシリーズは読み戻りたいと思っています。

それにしても本当にひとりなんですよ。勿論、協力を得て行動することの方が多いのですが、それだとしても、心底信用している関係性というわけではなく、最後は自身で決断して行動していくという状況に常に追い込まれている主人公の心境はとてもではないですが、推し量ることができませんでした。過酷すぎるのです。

とにかくへこたれないというか、絶対諦めないその姿勢は、完遂することを期待される軍人には必要なことなのかもしれません。でも、軍人だけによらず、最後まで突き進んでいく姿勢は社会人になると本当に貴重ですよね。諦めちゃう人も結構いますから。

ということで、まず、最初の物語をリサーチしてこの主人公の変遷を追っていきたいとおもいます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

福田和代（2016）『生還せよ』．KADOKAWA．