本日の物語は、西澤保彦氏の『夢は枯れ野をかけめぐる』です。

恥ずかしながら、西澤保彦氏を存じ上げませんでして、今回、拝読しましたこの『夢は枯れ野をかけめぐる』が初めて接した西澤保彦氏の物語でした。正確に言いますと、6つの短編が掲載されている物語のひとつが『夢は枯れ野をかけめぐる』となっており、最後におさめられている短編の題名です。

実は、読む前に題名に思いを馳せてどのような意味でこの題名がつけられているのかを勝手に想像し、物語を読み始めることが多々あります。まぁ、シリーズものなどは明らかですのでその余地はないのですが、それでもその思いを馳せる時間も私にとっては大切な時間となっています。没入させてくれる物語であればあるほど、「あぁ、なるほど」と題名に対する腑に落ち感もありますし。

さて、6つの短編を集めている物語集となっていますが、主人公は48歳、独身の羽村祐太。彼を主人公としつつ、登場人物によって物語の視点は異なります。背表紙に「本格ミステリに昇華させた、西澤ワールドの一つの到達点」と紹介されていますが、私が勝手にイメージしているミステリとは異なりました。ですが、最後の物語を除いては読後の感触は決して悪いものではなく、激しい動き(この場合の「動き」とはアクションというよりも登場人物の心情なり、場面展開を指します)を伴うようなミステリとはまた異なった感触を与えてくれた物語でした。決して突飛な人が出てくるわけではなく、ごくごく日常に即した登場人物だったのもその感触の要因のひとつのような気もしています。

同じような年齢で独身という自分とは異なった選択をした人の人生の物語を読んでみたいという衝動から選択しましたが、確かにこのような選択の人生も自分の中にあったのではないかとも思わされました。

自分を決して偽ることなく、自然体で向き合っていく。それは周りの人に対しても同じ態度で向き合っていく。一つの理想形であり、私もそのように自然体で生きたいと改めて思うことができました。どうしても着飾ったり、見栄を張ったりしがちですが、もうそのような年齢出ない事にも薄々気づきつつあります。変な啓発本よりもよっぽど自分自身を見つめ直すには適した物語であると思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

西澤保彦(2010)『夢は枯れ野をかけめぐる』.中央公論新社.


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