今回のテーマはクロスアポイントメント制度についてです。また、カタカナです。もう、翻訳するよりもカタカナの方が浸透しやすいんでしょうね。

 まずは定義から。クロスアポイントメント制度とは「出向元機関と出向先機関の間で、出向に係る取決め(協定等)の下、当該取決めに基づき労働者が二つ以上の機関と労働契約を締結し、双方の業務について各機関において求められる役割に応じて従事比率に基づき就労することを可能にする制度」を指します。民間企業との労働契約もあるでしょうし、複数の大学との労働契約も想定しています。ん?兼業と何が違うのか、が最初に出てくる疑問かと思われます。ちゃんとQ&Aがあり、そこに違いも記載されています。曰く、「兼業は、一般的に本務での職務専念義務を損なわない範囲での就業しか認められないため、他方機関の常勤身分を有することが通常想定されません。」クロスアポイントメント制度ではどちらも本務という身分ですよということです。そこで大切になるのがどちらをどれくらいの割合で就業するのかということ。それを双方で決めたうえで、労働契約を行う。どちらも本気で取り組んでもらいましょうという制度です。人口減少期にある日本において、活躍できる人には出来るだけ障壁を取り除いて羽ばたいてもらうための制度と言えるでしょう。平成30に実施された調査研究をみると、大学からすると限られた予算内で実施していた研究を拡大拡充していきたい、人的交流を活発化したい、企業からすると企業では着手することの無い研究分野で幅を持たせたい、客観的な意見を求めたいなどの活用に関する期待もあるようです。

 この制度、大学間でも利用可能でして、A大学の専任教員がB大学でも専任教員といったことも可能となる制度です。え?非常勤ではなくて? そうなんです、どちらも本務です。なぜ、こんなことを可能にするかというと人的交流ももちろん、人的資源の有効活用もその一つでしょう。ただ、私が思うに大学設置基準が大きく関与しているものと思われます。大学設置基準には分野ごとに配置すべき最低教員数、校舎面積などが細かく定められており、普通に解釈すると規模の経済が働いており、小規模な大学ではそもそも収支が合わない構造となっています。定められて時の想定が違いますから当然と言えば当然ですが。しかし、大学数も増え、収容定員数も増えた現状において予測できるのは大学数も減り、収容定員数も減っていくこと。その過程で最低教員数は維持できなくなる大学も当然出てくることでしょう。その際にこの制度は活用できますよということだと推測しています。多くの授業科目を非常勤講師に依存し、専任教員もクロスアポイントメント制度の活用で他大学に依存する大学も今後出てくることでしょう。大学としての存在意義をどこに定めるのか。いよいよ選別の時期に突入していると言わざるを得ません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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