読書感想文：柳広司氏『風神雷神　風の章』『風神雷神　雷の章』

　俵屋宗達と言えば、風神雷神。風神雷神と言えば、俵屋宗達。パッと思い浮かぶあの屏風図にこれほどの物語があったとは正直知りませんでした。勿論、小説ですので脚色も含まれているのでしょうが、それも含めて、あの時代に実在していた人達の壮絶な生き様には驚愕しました。俵屋宗達が俵屋宗達に成るまでの物語、出雲阿国との出逢いの物語、本阿弥光悦との時代を超越したコラボレーションの物語、烏丸光広との不思議な友情の物語。前知識が無いからでしょうか。全く先入観なくすんなり物語に没頭出来ました。

　全く個人的な志向ですが、私、職人が好きでして、いつまでも見ていられるタイプです。手仕事日本という番組も好きでした。ですので、俵屋宗達のどこまで行っても職人としての矜持に深く感銘を受けました。勿論、物語の中の俵屋宗達にですが。どこか抜けた感のあるキャラクターでありながら、スイッチが入ったら、職人の顔が前面に出てくる。私が好きなタイプの職人像そのものです。何でもそつなくこなすよりもある点では抜けている人の方が魅力的じゃないですか。でも、一点これにおいては突き抜けたものを見せる人。

　物語に出てくる周りの人達もそんな俵屋宗達に妙に惹かれていく。一番、最初に見抜いたのは俵屋宗達の養父だったのかもしれません。完全に余談ですが、上下巻ではなく、「風の章」「雷の章」と分けているセンスも素敵です。

　私、この小説にハマってから、柳広司氏の著作を次々に読破していってます。それぞれに没頭させてくれる物語となっていますが、それはまた別の機会に。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

柳広司（2017）『風神雷神　風の章』．講談社

柳広司（2017）『風神雷神　雷の章』．講談社