本日のテーマは、医学部定員に優先枠が設けられる件についてです。既にメディアに出ていますので、ご覧になった方は多いと思いますが、政府は感染症流行に対応できる医師を増やすため、診療科を限定した定員枠を設けることとするようです。

【独自】医学部定員に感染症科・救急科の優先枠、23年度にも…専門医を育成(読売新聞)はこちら

以前のブログに記載しましたが、医学部の定員については抑制の原則に基づき、学部学科の設置は許されていません。このため、今まで既存の医学部の定員の増で対応しています。と言いつつ、近年では学部設置は特例で認められているというケースもあります。

 定員の枠組みについては、以前のブログにて触れました通り、一般枠・地域枠・歯学部振り替え枠・研究医枠があり、枠の名称そのままの意味ですが、今回の診療科を限定した枠は地域枠の中に設けられる予定だそうです。スケジュールとしては、今月27日の厚生労働省の有識者会議で了承を得られれば、2023年度入学者から適用されます。

 地域枠に入れられるのは、勿論、地域間の格差があるためで、都市部は充実しているが、地方は一人もいなかったりするようで、ここでも通常の医師の分布に近いものがあるのでしょうね。ましてや、余り人気がありそうでない感染症や救急は地方では深刻な人手不足だと思われます。新型コロナウイルス感染症拡大という予期せぬ事態に見舞われた日本においては切実な課題です。

 一般社団法人日本感染症学会では、「感染症専門医適正数」が提示されており、「300床規模以上の医療機関には感染症専門医が常勤で勤務しているべきと考えられる」と提示されており、全国には300床規模以上の医療機関が約1500施設あるが、最低1人と想定しても均等に分布されるわけでない為、「病院に勤務する感染症専門医の人数は3,000~4,000人程度が適正と考えられる」と結論づけられています。

「感染症専門医の医師像・適正数について」(一般社団法人日本感染症学会)はこちら

この提言が平成22年10月とありますので、約10年前としても概数として3千人前後は必要ということでしょう。

感染症指定医療機関の指定状況を見てみますと、

特定感染症指定医療機関 4医療機関(10床)

第一種感染症指定医療機関 56医療機関(105床)

第二種感染症指定医療機関 351医療機関(1,752床)

となっており、今回のような感染爆発が起こると満床になるのも納得がいきます。

感染症指定医療機関の指定状況(令和2年10月1日現在)|厚生労働省はこちら

今回の定員枠の設置については、地域枠内の設定ですので、それでも50名程度と予測され、この学生たちが卒業するまでに要する年数が6年、研修医として勤務して一人前になるのが5年と想定しても、今から10年後へ向けての施策となります。そう考えると、やはり「教育は国家百年の計である」という言葉の重さが今更ながら実感できます。それはそうですよね、人材育成って時間が掛かりますから。

最後までお読みいただきありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします。

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