結局、謎は謎のままに終わり、平穏な日常がやってくる。

現実にはそのことの方が多いのだろう。

もちろん、私自身は謎に出会った経験はない。
だからこそ、ミステリー小説には憧憬の念も込めて、愛好するのだろう。
そして、登場人物の「視点」に舌を巻かされるという期待と、物語への没入への期待と。
社会へ出ると、日々、現実的な課題と自らの言動への責任とで追われているが、物語との出逢いによって、得られるものの大きさも同時に実感できている。
だからこそ、稀有な出逢いがあると本当に感謝したい。

というわけで、今回の物語。

 ストーリーテラーの金満春馬くんは都内の私立高校に通う普通の、いやお寺の息子さんなので、それなりに裕福なご家庭(少々、お兄さんに虐げられている感はあるものの)の高校生。

その春馬くんがお墓関連、特に題名にもある戒名についての知識(もちろん歴史などにも詳しいからこそだが)に長けている外場薫くんと戒名にまつわる事柄について解き明かしていく物語。

おそらく、前振りの物語をいくつか経た後で本編という構成となっているよう。
半世紀を生きたこの年齢だから、分かることもあるが、出来れば、若い年代の人達にも読んでいただきたい。
遠い世界の話しではなく、周りをふと見れば、お寺さんはあるはずで、そこにはお墓もある。そのお墓には誰かが祀られていて、卒塔婆もあるお墓もある。

装丁から入った物語だが、オススメである。


高殿円(2021)『戒名探偵 卒塔婆くん』.角川書店.


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