両親の共働きが一般的になり、それと呼応するように学習塾が一般的になって久しいが、それでも家庭学習は大切だし、その場で育まれる情操教育は目には見えないが、後々に大きく影響が大きいような気は常々している。
主人公の◯◯は、元小学校の教師で今は実家に戻り、父親のパン屋を継ぐための修行の身。父親と息子の3人暮らし。
現代の小学生が置かれている現状は我々が生きた時代とは大きく異なっているのは確かだが、それでも学校や家庭で出来ることはまだまだあると本作は気づかせれてくれる。
この物語には、幾つかの社会問題も含まれていて、丁寧な表現が問題点を見事に浮かび上がらせている。
学校に奉職している身としては、なんとかしてあげたいと思うものの、結局、リーチできずに退学していく学生を見送る場面を幾度となく経験している。
主人公はその一歩を踏み込んでみる。そこには理解を得られず、頓挫することもあるが、それでも開けてくる道も確かにあり、そこに子どもの少しだけ明るい未来を垣間見ることができる。
やらないことの後悔よりも、やったことの後悔。
言葉にするのは簡単だが、選択するのはかなりの勇気と決断が必要。
この主人公にはその勇気と決断をする必然性を有していた。その背景にも注目していただきたい。
境遇や場面は違えども、同じような勇気と決断を誰しもが迫られる瞬間はあるはずだし、あったはず。
その一歩を後押ししてくれる物語をある。
ということで、オススメ。
伽古屋圭市(2023)『クロワッサン学習塾』.文春文庫.
カテゴリー: 感想文(読書・映画諸々)
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