多様性
今では当たり前に口にしているが、以前から日本は多様性に満ちた社会であったと読後にしみじみ思い至った。

この物語の登場人物たちもその多様性のひとつ。

多様性が既にあったということは、昔は寛容さが低かったということ。今も寛容さが高い状況とは到底言えないが、それでも真っ当に発言・発信出来る世の中にはなりつつある。

虐げられる人
虐げる人

どんな人もその狭間に常に置かれている。どちら側に転んでもおかしくない。

だからこそ、その状況を共有・共感できる仲間の存在は大きい。

ちょっとした愚痴や不満を言える相手。

ちょっとした喜びや驚きを言える相手。

その小さな積み重ねが日々を安寧に過ごせていける大きな要素のひとつだと壮年を迎えている今の私には痛感させられる。

伊兼氏の物語は、表現が硬質が故の距離感を感じるのだが、なぜか没入の度合いが他の作家と全く異なる。

私は、物語に他者の人生の擬似体験を求めているが、伊兼氏の物語は擬似と呼ぶには余りにも生々しく、余りにも苛烈な内容がほとんどで、読後の疲労感はかなり激しい。
それでも、また、読みたいと思わせる物語。

皆さんにも読んでいただきたい。

オススメである。







伊兼源太郎(2023)『約束した街』.幻冬舎.


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