万城目学氏と言えば、物語のタイトルが奇想天外過ぎて、内容の想像がつかない作家というイメージがある。

いや、だからこそシンプルや分かりやすいものに慣れきった人々は、その深淵なる物語に吸い寄せられるのかもしれない。

物語を読んだ勝手なイメージでは、相当な頭の容量を有しているのでは、とおもっており、実際、略歴を拝見すると「京大法学部」とあり、ほら、やはりと。

ほぼ、同じ時期に同じ京都で何も考えずにのほほんと大学生活を送っていた私とは雲泥の差なんだろうとこのエッセイを読み進めていくと、さにあらんや。

ひとりの若者がどのようにして作家という、類稀な職業に就くこととなったのか。
引き寄せつつも、近寄らせず。
分かったつもりで、全く的外れな思い込み。
著者と読者の距離感をこれほど巧みに操られると爽快ですらある。

私のような半世紀も歩んでしまった年代よりも、出来得れば、これから大学生活を迎える若者に手にとっていただきたい。

切に思い至った次第である。

人生、2周目に入れる特典があるはず。



万城目学(2019)『べらぼうくん』.文藝春秋.


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