続編か?

あまりにも前提があり過ぎで物語が進んでいくので最初にこの印象を持ってしまった。いや、かと言って物語に戸惑うわけでも、留まるわけでもなく、存分に没入させてくれる。

主人公は、本所南署の世田と天羽。世田はいわゆる昭和の刑事を地でいく中年刑事で、天羽はサイバー犯罪担当の部署から運動不足を理由に異動願いを出してきた今時の女性刑事。一見合わなさそうな二人が、女性教師の殺人事件を皮切りに次々に起こっていく事件に誘われていく。

各々が遠い事件であったものが、後から必然的に繋がっていく展開で、一気に読み進めていける。まるでドラマを見ているようだなと思ったら、秦氏の肩書は、「小説家・脚本家・演出家・映画監督」。なるほど、没入させる術は熟知しているわけだ。

ただ、登場人物ひとり一人の顔が浮かびにくい。物語はスピーディーに流れていくものの、各人の内部をもっと知りたいとも思った。キャラクターとしては一見強そうなのだが、各登場人物にシンクロするところまでは及ばなかった。映像としては浮かぶだけにそこは残念なところ。

もし、映像化されるようであれば、本編とは別にスピンオフで製作したいただきたい。

なんだかんだ言いつつ、おススメである。




秦建日子(2023)『Change the World』.河出書房新社.


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