卒啄同時(そったくどうじ)

またとない好機。
学ぼうとする者と教え導く者の息が合い、相通ずる。

集団で生活することの意義。





人の行動や思考の変容はどのようなことをキッカケにして起こりうるのか。

私が不惑を過ぎてから、小説を読み始めたのは、そのキッカケを擬似体験できることを知ったからなのだろう。

物語という仮想世界を舞台にして主人公たちは様々なことに直面する。

直面した登場人物はどう反応し、対応するのか。

自分であれば、ここはどう決断をしただろうと。

齢も半世紀経つと、既視感の方が多くなり、あまり驚きや発見が少なくなってくるのも事実である。

私が読書や旅をするのはそこからの脱却を無意識に求めていることに起因するように思う。


今回の物語では、一貫して現代のリーダーの在り方が問われているような印象を受けた。

どこまでも他者を信じる。
自分自身に正直であり続ける。
前を向く。

いずれも出来そうでやり抜くには困難を極めるであろうと予測がつく。

方法論は何も真似する必要はなく、自分にあったやり方を見つければよいのだが、優れたリーダーの根本はいずれも共通するように思える。

そう考えると、学校時代に共同生活を営むのは、修練の場としてはかなり有効である。

ただ、主人公が一年生の時のような寮は絶滅危惧種とはなっているだろうな、おそらく。

兎も角、オススメである。


藤井太洋(2023)『オーグメンテッド・スカイ』.文藝春秋.


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