小学6年生男子の物語。

12年しか経ってない。
12年も経った。

主人公はおそらく後者なのだろう。

私自身、正直、あまり幼い時分の記憶がない。
記憶力がよくないのも多分にあるし、ほんとうに平々凡々だったのだと思う。

親友と呼べる友人もいたのかいなかったのか。
ドーナツ化現象で中心部にあった小学校のため、クラスは辛うじて2クラス。しかも男子は10名程度。
コミュニティが小さいこともあり、いじめらしきものもあったように記憶しているし、いざこざもあったように記憶しているが定かではない。

1日がとても長く感じられ、それは大学卒業まで続いた。
社会に出て、働きはじめて、「あぁ、自分にとっては働くことだったのだな」と実感したのはよく覚えている。当時、周りの人たちにはようやく時計の針が動き出したと表現した。

翻って、この物語の主人公・佐倉ハルは、間違いなく、時計の針が動いている人生を送っている。

いくつもの耐えられない状況を経験しながらも、前に進んでいる。
周りにも恵まれているようで、両親はもちろん、祖父の「哲じい」、クラスメイトの「三好」、恩師の「あかねえ」という存在も大きい。

本人は孤独を感じることも多いだろうが、周りは本当にハルを見守っている。踏み込まず、離れず。

金髪の転校生との出会いが物語の中心ではあるが、ハル自身の心象風景がほとんどを占めるこの物語で、月並みだが、自分だったら、どう反応し、どう行動したかを考えて見て欲しい。それがラストに繋がっていくから。

オススメである。

八重野統摩(2018)『ペンギンは空を見上げる』.東京創元社.


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