レビー小体型認知症という病名をご存知の方は、どれくらいいるだろうか。少なくとも、この物語によって認知度を上げたことは間違いない。
特異な症状としては、幻視が出現するということ。しかも、かなりリアリティを持って。なので、より一層、現実世界との乖離が起き、家族を含めた介護者を混乱させる。本人はパラレルワールドと現実世界との境が存在していないのだから。
主人公の楓の祖父はそのような病状の認知症を患っている元小学校校長。
原題にも含まれている紫煙をくゆらせるとその知識と知性により、ものの見事に『物語』を紡いでしまう。(『物語』の定義は本作にてご確認いただきたい)
同じモノを見、同じコトを聞き、しているにも関わらず、紡ぎ出す『物語』が異なる。
少しの意識の差の積み重ねが膨大な差を生み出す。
このことはビジネスの世界でも同様のことなので、おそらく一事が万事なのだろう。
そして、この物語で重要なのは、認知症の祖父も、介護者である楓も、そして、彼らを取り巻く人々もまた皆、相手を思いやる心を持っているということ。
そのことも普段から心掛けていきたいと改めて思わせてくれる。
間違いなく、オススメ。
小西マサテル(2023)『名探偵のままでいて』.宝島社.
カテゴリー: 感想文(読書・映画諸々)
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