生々しい。
実に生々しい。
約15年前の物語とは言え、2023年の現在においても充分に通用するリストラが主なテーマとなっている物語である。
これが果たして読み進めるに耐えうる物語なのだろうか。最近はあまり激しい内容の物語は忌避していた私からすると正直怯むような出だしである。
しかし、主人公の村上真介がどうも気になる。所属しているリストラを請負う会社には何か割り切った考えで所属しているようにも思える反面、それだけではない何かを感じさせる。
それは今までの彼の歩んできたキャリアにも由来するし、女性遍歴にも由来することが後々、読み進めるうちに明らかになる。
仕事には真摯に向かいたいと常々、私は思っている。元々、バカ真面目ということもあるが、単なる自己満足というよりも、自分が真摯に向き合うことで少しでも、事態が、周りが好転していって欲しいというのが本音のところ。自分の及ぶ範囲はたかがしれていると言ってしまえば、ホントにそれまでなのだが、それでも自分が真摯に向き合うことで良い影響が広がっていくことを本気で願っている。
ただ、思いが及ばない人も当然いるわけでそこで堰き止められることも頻繁ではないにしろ、ままあるもの。それでも継続しているのは、やはりバカ真面目なんだろう。
村上真介と関係を持つ女性にもついついそのような自分を投影してしまう。
きっと皆さんもこの物語のいずれかの登場人物に自身を投影してしまうはず。
兎に角、オススメである。
垣根涼介(2007)『君たちに明日はない』.新潮社文庫.
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