今回の書籍は柏木伸介氏の『県警外事課 クルス機関』です。なぜにこの本をとったか。それは「このミステリーがすごい!」大賞・優秀賞を受賞されているというのが背表紙に見えたからです。そういうのに弱いです。背表紙に入っているってなかなかないですよね。帯にはよくありますが。そこらへんの宝島社の戦術にハマって手にとってしまいました。

 何を隠そう、私、伊兼源太郎氏の物語のファンでもありますが、柳広司氏の物語のファンでもありまして、スパイ関連の物語ということでというのもありました。○○機関という名称がスパイ関連の物語に直球なタイトルでして、「おっ」と思ったわけです。

 でも、結論から言いますと、腑に落ちません。最後が腑に落ちません。「えっ、これで終わりなの?」という結末です。例の如く、粗筋すらも触れない(なにせ読書感想ですので)のですが、物語の最中の疾走感は非常に読み応えがあり、クルス機関という名称の使い方も登場人物のキャラクターの立ち方も興味深かったのですが、伏線や振りが最後に向かってまとまっていないというか、急に終わった感があります。勿体ないと感じてしまいました。これは、この物語で終わるのではなく、次回作があるなと思い、柏木伸介氏の著作を調べてみるとやはり、ありました。で、まんまと次回作も読んでいるわけです。ということは、これは商業的にはハマっているわけで、その観点からすると成功と言える訳ですよね。

 でも、伊兼源太郎氏の物語も柳広司氏の物語も別の手法で十分な余韻を残しつつ、次回作にもきっちり繋げていることからするとやはりイチ読み手としては勿体ないと思わざるを得ません。あと、強いて言うなら、女性の登場人物の描き方がもう少し丁寧だとより引き込まれたかもしれません。登場する女性が唐突な感じがして、女性である必然性があまり感じられなかったという登場人物もいました。描ききる視点がもっと突き抜けているとより没入できたと思います。

 それにしてもおそらく相当入念にリサーチした上で、物語を構成されたと思われ、各組織(日本以外の組織も含めて)の置かれている現状については、リアリティがありました。日本ってやはりセキュリティ対策が弱いんですよね。最近の記事でも出てきていますが、戦争の在り方も劇的に変化してきて、陸・海・空の次の4番目の場所としてネットワーク上での戦争が相当仕掛けられているようで、日本は本当に後手に回っているようで。その辺りの状況も十分、視野に入れつつの現実社会における危機が描かれています。

次回作も楽しみすが、それはまた別の機会に。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

柏木伸介(2017)『県警外事課 クルス機関』.宝島社.


2件のコメント

読書感想文:柏木伸介氏『起爆都市 県警外事課クルス機関』 - 大学よもやま話 · 2021-07-28 04:09

[…] 読書感想文:柏木伸介氏『県警外事課 クルス機関』 […]

読書感想文・柏木伸介氏「県警外事課 クルス機関」シリーズ 記事まとめ - 大学よもやま話 · 2021-09-03 08:20

[…] 読書感想文:柏木伸介氏『県警外事課 クルス機関』 読書感想文:柏木伸介氏『起爆都市 県警外事課クルス機関』 読書感想文:柏木伸介氏『スパイに死を 県警外事課クルス機関』 https://takayamaclub.matrix.jp/columns/reading-impressions-kashiwagishinsuke04/ […]

コメントを残す

アバタープレースホルダー

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です