今回の書籍は北方謙三氏の『チンギス紀十 星芒』です。

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毎回、聞きなれない言葉が題名となっている『チンギス紀』ですが、今回の星芒の意味は「星の光・星の光芒」だそうで、光芒って何と調べると、細長く伸びる一筋の光を指すようです。

勉強になります。モンゴルの草原では星の光を遮るものは無いでしょうから、星空もさぞかし美しく満天の星空なのだと思います。その中で輝く星の一筋の光。それがチンギス・カンを指しているのでしょうか。

今回は既にモンゴル草原を平定した後が描かれていますが、冒頭がいきなり、西域のホラズム・シャー国の王子の話からとなっており、少し戸惑うと同時に、物語のスケールがいよいよそこまで来たのかと期待をさせてくれます。北方謙三氏の物語は、主人公(今回は勿論、チンギス・カン)がありながらも、章ごとで中心となる人物が異なっており、それが重層的になっているが故、物語の深さと広さを伴っていくという形式をとっていっています。そんなに読んだ訳ではありませんが、『史記 武帝紀』『三国志』もそのような物語の構成となっており、時代の変遷とともに変わっていく各々の登場人物の心情の変化がどこかの段階で自分自身の境遇とシンクロするところがあり、それが北方謙三氏の物語の魅力のひとつではないかと思っています。

私が毎度、惹かれるのが能力があるにも関わらず、物語のど真ん中ではなく、周辺にいて、しっかりとその存在感を発揮している人物です。今回の『星芒』では、メルキト族を率いる立場をアインガに譲り森に住むトクトアであり、チンギスに討たれたジャムカの息子・マルガーシですね。前回の巻で瀕死のところをトクトアに救われたマルガーシのその後が描かれており、それもまた物語の広さをイメージさせてくれます。加えて、ケレイト王国滅亡のため流浪の身となったジャガ・ガンボも同じ意味で広さをイメージさせてくれます。

そして、主人公であるチンギス・カンの視線の先には金国があり、本人の言葉で金国を焦点にした言及はないですが、徐々にその姿勢が明らかになっていきます。その為に必要な戦力・人材などが丁寧に描かれており、いよいよ決戦へ向かっていくこととなります。

次の巻が出るのがまたもや楽しみです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

北方謙三(2021)『チンギス紀十 星芒』.集英社


1件のコメント

読書感想文:北方謙三氏『チンギス紀 十一 黙示』 - 大学よもやま話 · 2021-09-07 05:16

[…] 読書感想文 北方謙三氏『チンギス紀十 星芒』 カテゴリー: 読書感想文 タグ: チンギス紀北方謙三 […]

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