父親が子供に語ることは世間には聞こえないが、彼の子孫には聞こえる

ジャン・パウル

私、小説と言う形態の物語を読み出したのはほんの4・5年前くらいからでして、それまで物語と言えば、映画かマンガがほとんどでした。当然、読んでいる量もおそらく人よりは多いはずですので、マンガへの選球眼も鍛えてきていると自負しております。

そして、今回、ご紹介するのは、子どもの日だからこそ、読んでいただきたい作品。

夢枕獏氏と言えば、超がつくほど有名な作家ですが、マンガの原作となっている物語も多数あります。そして、今回ご紹介する『真・餓狼伝』の第1巻のあとがきには原作者の期待を上回る旨の言及がなされています。それくらいに、濃密な物語となっています。

世は明治維新直後の明治という時代。今からは想像するのが困難なくらい価値観が転換した時代と言っても良いのだと思います。そんな時代に対峙する講道館・前田光世(後のコンデ・コマ)と丹波文吉(彼の出自や武芸は物語のポイントとなりますので是非とも読みながら堪能していただければ)。

この二人が対峙し、決着するまでが物語と思いきや、さにあらずでして、丹波文吉が対峙に至る経緯、そして父親と歩んだ道筋が物語の中心となっています。

個人的な解釈で表現すれば、「親子愛」。父親の無償の愛がそこにあり、丹波文吉はそれを一身に受ける。定められた運命がありながらも、自身の持てる全てを持って、応えていく。主人公は、丹波文吉その人なのですが、一読した後に、父親の視点で読むとまた違った風景が見えてきます。男くさい格闘マンガではあるのですが、その根底に流れる人の愛(親子愛・博愛・隣人愛など)が凝縮された物語でもあります。

子どもの日だからこそ、父親に一読していただきたい物語です。おススメです。

夢枕獏・原作&野部優美・作画(2013)「真・餓狼伝」.秋田書店.


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