今回のテーマは、大学等設置に係る寄附行為(変更)認可後の状況調査結果についてです。

「大学等設置等に係る寄附行為(変更)認可後の財政状況及び施設等整備状況調査結果について(令和4年度)」(2023.03.24 文部科学省)はこちら

取り上げてみたものの題名だけ見ても業務として携わったことのない人から見ると何のことやらだと思います。私立大学に勤務している教員や事務職員であっても何のことやらと言う方も多いかと。でも、この調査、私学経営の核のとなる項目が幾つも含まれていまして、新しく学部学科を設置する私立大学だけでなく、計画が無い私立大学においても定点観測しておきたい調査だったりします。

ということで、調査の概要をものすごーく簡略化して言いますと、学校法人(≒私立大学)が学部学科を開設しようとする際には定款である「寄附行為」というものを変更する必要があり、その変更に伴って提出した法人経営に関する諸々の書類をその後も見ていきますよ調査となっています。

提出した書類の審査をもって認可もしくは不認可が下されるわけですから、当然と言えば当然の調査ではあります。そして、その調査結果が上記ページのような形で公表されているわけです。

詳細につきましては、上記ページにてご確認いただきたいのですが、法人毎の指摘事項が一覧で表記されています(もちろん、大学名も)ので、志望されている大学の経営状況の一端を知ることが可能となっています。

概要を見る手始めとして、令和4年度と令和3年度の対象法人数の比較をしてみますと以下の通りです。


 R4年度R3年度
調査対象学校法人138138
指摘が付された学校法人83107
うち、法令違反2727
うち、是正4814
うち、改善6798


対象学校法人がおそらく異なりますので、単純比較はできませんが、ご覧になられていかがでしょうか。指摘事項を受けている法人は減少し、内訳で見ると、是正の指摘事項を受けた学校法人が増加していることが読み取れます。
「是正」は用語の定義によりますと、「管理運営上著しく不適切と認められる事項があり、学校法人に早急な是正を求める事項」とされています。「是正」の代表的な事項としましては、以下の通りです。
1.理事・評議員が寄附行為に定める数に対して欠員であるため、是正を求めるもの
2.入学定員の未充足(0.5倍以下)の学科について、健全な法人経営の観点から定員変更を含めた速やかな是正を求めるもの

ちなみにもう一段階下の「改善」につきましては以下の通りです
1.入学定員の未充足(0.5倍超~0.7倍未満)の学科について、健全な法人経営の観点から定員変更を含めた速やかな是正を求めるもの
2.経常的な収支が継続してマイナス(赤字)となっていることから、収支の改善を図り、経営基盤の安定を求めるもの

「是正」の2については、学部学科が開設して完成年度を迎える途中段階で平均の充足率が5割を満たしていない状況、また「改善」の1については、7割を満たしていない状況が指摘を受けている要因となっています。加えて、「改善」の2では、収支がマイナスとなっていることから、このまま継続して収支がマイナスだと法人経営に支障を来しますよというアドバイスの側面もあります。

ここで各学校法人は完成年度までの計画を再度練り直し、経営改善に取り組む必要があります。学生募集のやり方を見直すのか、支出を削減するのか、はたまた入学定員を削減するのか。経営の巧拙が如実に出てきますので、運命の分かれ道になることもあり得ます。と言うことは、そもそも指摘事項を付されていない学校法人については、真っ当な経営をしている可能性が高いという捉え方も出来ます。是非とも一度ご覧になってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。

(参考記事)

https://takayamaclub.matrix.jp/columns/faculty-opening07/
カテゴリー: 大学

コメントを残す

アバタープレースホルダー

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です