「運命の中に偶然はない。人間はある運命に出会う以前に、自分がそれを作っているのだ」
ウッドロウ・ウィルソン
(第28代米国大統領、国際連盟設立提唱者、ノーベル平和賞受賞者、1856~1924)
初恋に始まり、初恋に終わる物語。
どんな巡り合わせも自身がそれと気づかないと素通りしてしまうもの。
運命の出会いなのか、それとも単なる知り合い程度なのか。
この物語、主人公が結局、誰かか分からないまま読み終わってしまいました。逆に言うとどのキャラクターの視点も主人公の視点のような。
『K2』の神崎、黒木が登場する物語ではあるのですが、物語の重要な要素ではあるものの、水沢早苗や大貫修二、早苗の子どもの視点もより重要だったり。
複数の人物の視点を介することで物語が立体的に感ずることを体験。
物語は、夫と死別した早苗が記憶をなくした大貫修二が偶然に出会うことから展開していく。
記憶をなくしたにも関わらず、明るいキャラクターの修二。その明るさが物語を進めていく上で効いてくる。突き詰めて思考することもビジネスではもちろん大切だが、それ以上になんとかなるよという楽観的な姿勢はより大切かと。
横関大氏の物語で注目しているのは各章の題名。今回はそれぞれ「○○者のサイン」。で、物語そのものの原題は『チェインギャングは忘れない』だが、英題は「THE SIGN OF CHAINGANGS」。
SIGN には
象徴、しぐさ、合図
の他に
〔あるものの存在を示す〕しるし、証拠
〔前触れとなる〕兆し、兆候
という意味もある。
運命となるサインに気づくことができるかどうか。そのことの大切さと面白さに気づかせてくれる物語である。
ともかくオススメ。
横関大(2011)『チェインギャングは忘れない』.講談社.
(参考記事)
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30秒間読書感想文:横関大氏『アカツキのGメン』 - 大学よもやま話 · 2023-06-12 23:04
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