国としては大学に対して、設置認可を与えた以上、管理下に置いておかなければならないという役割がある一方で、前提となる条件が様々に変化してきた現状においてその管理の方法自体を見直す時期にきているのも明らかとなっています。

定員管理はまさにそのはざまにある課題でこれまでのスタンスは「入学定員」による管理でした。「入学定員」の管理とは、学部学科毎に定められている入学する定員の過不足を管理するという方法です。この方法、大学によってはものすごく大変でして、東京大学を頂点とした国内のヒエラルキーにおいて、歩留まり率という果てしなく、先の見えない率を各大学の入試関係に携わる人たちは頭を毎年度悩ますわけです。

何がそんなに悩ます要因になるかと言いますと、例えば、収容定員8千名以上の私立大学が入学定員の1.1倍以上の入学者があった場合、私学助成が全額不交付になるという重たーい懲罰が待っているわけです。そうなると、保守的にならざるを得なくなるわけで一時、首都圏の大規模私立大学が難化したのはそのような事情があった訳です。その併願校も同じような状況にありますので、益々入りにくい状況に陥りました。そのような事態の要因がこの「定員管理」という前提があるためです。

しかしながら、大学共通テストの際に散々議論をされてきましたように入試の段階で一点刻みで選抜することに本当に意味があるのかというのと同じように入学段階で細かに管理することに本当に意味があるのかという議論が文部科学省内の「質保証システム部会」の中で議論が行われています。

質保証システム部会(第9回)会議資料はこちら

定員管理の議論で私が気になったのは、学生の人数を管理するということはそれに見合った教員の人数を管理するということとセットですから、当然、教員数の議論も行われているのだろうということです。勿論、ありました。質保証システム部会における関連する主な意見として「教育の環境確保のために大事になってくるのはST比」が引用されています。そうです、ST比です。Sはstudent、Tはteacherを指しており、教員一人当たりの学生の人数を指します。普通に考えて、教員一人当たりの人数が少ない方が手厚い指導が出来ますから、ST比も低い方が良いですよね。ただし、私立大学の場合、それでは経営が成り立ちません。何せ収入の約7割(大学によって異なりますよ、もちろん)が学納金収入ですから、学生数は多い方が経営的には良いに決まっています。でも、そうなるとST比は高くなります。そこが国立大学と私立大学の違いともなってきますし、定員管理の必要性の有無ともつながってきます。余りにも多く入学させてしまうとひとりひとりに目が行き届かなくなり、本当に教育の質を担保出来ているのかと問われても仕方ないですから。

定員については入学定員と収容定員の二つがあり、大まかな方向性としては収容定員で管理していくようになるようです。会議資料にも「入学定員から収容定員へ」「学部単位から大学単位へ」「単年度単位から複数年度単位へ」見直すことについての各会議での論点がまとめられています。

現行の大学設置基準では、教員数についても細かに規定されていますので、全てを自大学で揃えるという自前主義からの移行に伴って見直しがされると思われます。

なお、会議資料の論点の最後にありますが、留学生数と社会人学生数をどのように扱うかも注目したいです。学生数の算定から除外する(カウントしないということですね)という意見もあったようですし、定員管理の観点からそのような視点も当然あってしかるべきだと思います。既に風化していますが、定員充足のために留学生を入学させるだけさせて、ほとんどが行方不明という大学も出ましたし。極端な事例は除くとしても、定員管理の様相は変わってきつつあります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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