自分には心当たりはないが、確実に忍び寄る脅威。偶然か自身の妄想に過ぎないと思っていても重なるとそれが必然となってくる。そんな場面に直面した時に人間としての姿勢が問われます。そこから回避するのか、それとも立ち向かうのか。

 主人公の今光凛太郎は一か月前に30歳を迎えた玩具メーカーに勤める普通のサラリーマン。ある夏の日に偶然にしては明らかに命の危険を感じる状況に遭遇。幼馴染の警察官とともにそのような状況に遭遇した原因を突き止めていくという物語です。

 命の危険に晒されることは、意外と身近な場面で起こりうることですし、それをSNSなどの現代的なツールの持つ不気味さと相まって、前半は息苦しさを覚えるような展開となっています。私は無呼吸で耐えました。後半は前半とは異なりかなりのスピード感で展開していきます。

 この作品は、伊兼源太郎氏のデビュー作で、読みたいと思っていた作品です。第33回横溝正史ミステリー大賞を受賞しています。受賞のことばには、「どんな人生を選ぼうと、易しい道はない。だったら悲観することもない。一歩を踏み出した以上、歩みを止めずに山の頂を目指すだけだ。」とあります。10代20代の人達もこの覚悟で歩んでほしいと思わせてくれる言葉です。本物語の主人公の生き様にも通じるところがありますね。

 巻末には選評が掲載されており、各選考委員のコメントが付されています。同業者のプロの目から見るとこのように捉えるのかとうなってしまい、結構厳しい評価が下されているので、本物語を読了後は併せて読んでみることをおススメします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

伊兼源太郎(2013)『見えざる網』.角川書店


1件のコメント

読書感想文・伊兼源太郎氏 記事まとめ - 大学よもやま話 · 2021-09-16 21:15

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